活動報告

2023年度プラクティススクール実施報告

プラクティススクールは博士後期課程1年の科目です。物質・情報卓越プラクティススクール第一では、企業訪問に先だって、実践的なデータサイエンスを行うために機械学習の復習やデータの前処理の実習を行いました。2023年度の物質・情報卓越プラクティススクール第二は、株式会社レゾナック(共創の舞台・横浜市)とJFEスチール株式会社(東日本製鉄所・千葉地区)の2カ所で実施いたしました。両社のご厚意により本年も各社拠点内で対面実施することができ、学生はオフィスでの過ごし方や通勤・昼食など、企業で働く生活スタイルについても体験することができたほか、多くの社員さんとの交流の機会を設けていただき、博士を取って企業で働くキャリアについても理解を深められたように思います。

株式会社レゾナックとJFEスチール株式会社から出された課題は、幅広い産業に関係する基盤的な課題から実際の産業に関わる課題まで様々ありました。学生たちは、6週間という限られた期間の中でマテリアルズインフォマティクスやマテリアルズシミュレーションのテクニックを駆使して素晴らしい成果を出しました。特に、各社の担当研究者と物質・情報卓越教育院(TAC-MI)の教員を交えたディスカッションを毎日のように行いながら改善を繰り返す姿が印象的でした。学生たちはそれぞれ異なるバックグラウンドを持ち、プラクティススクール初日に初めて聞いた課題にも積極的に取り組んでおり、今回もTAC-MIの学生たちの能力の高さを認識させられる機会になりました。事前の準備や期間中のイベントの企画を含め、細やかなご配慮をいただきながら絶好の教育の機会を与えていただいた株式会社レゾナックとJFEスチール株式会社に深く感謝申し上げます。

プラクティススクール第二(株式会社レゾナック)

6月30日~8月10日の6週間、株式会社レゾナックにて、飯野永美夏、巽由奈、Aparna Chitra Sudheer、樋口龍生、胡中煦、Zhang Xueyu、佐藤駿、登倉大貴、Yang Yinghuiの9名の学生が参加し、3テーマの課題について、グループに分かれてそれぞれの課題に取り組みました。株式会社レゾナックの新事業所「共創の舞台」にて実施させていただきました。材料化学分析の研究部隊や、計算科学・情報科学部隊が集まった環境の中で実施させていただき、毎日のディスカッションを通じ、日々刺激を感じながら業務を進めることができました。株式会社レゾナックには学生たちが普段触れることのない、企業として重要な課題を用意していただきました。企業の担当の方の手厚い指導を受けながらチームメンバーとも協力して、最先端の機械学習手法や情報科学の手法などを駆使して課題解決に取り組みました。さらには、プラクティススクールの取り組みの様子がNHK「おはよう日本」で取り上げられ、福島最高技術責任者との対談をさせていただきました。このような素晴らしい環境を提供していただいた株式会社レゾナックの皆様には感謝申し上げます。

これらの成果は、8月10日、株式会社レゾナック「共創の舞台」大会議室を会場とし、対面とオンラインのハイブリッド開催にて、本学と株式会社レゾナックによるプラクティススクール最終報告会で報告されました。最終報告会には、参加学生、本学教員および企業関係者ら35名が参加し、活発な質疑応答が行われました。報告会は、物質・情報卓越教育院の山口教育院長および株式会社レゾナック「共創の舞台」の 黒木舞台長の開会のご挨拶で始まり、続いて3つの学生グループがそれぞれの成果を報告しました。学生たちの発表後、山口教育院長及び株式会社レゾナック計算情報科学研究センターの奥野センター長より講評のお言葉をいただきました。また、表彰式では井村理事・副学長よりお言葉をいただきました。

初日、「共創の舞台」ロビー集合
企業関係者との交流会の様子
プラクティススクールに取り組む学生たち
プラクティススクール最終報告会の発表の様子
プラクティススクール最終報告会(株式会社レゾナック 共創の舞台 大会議室)

株式会社レゾナックからのメッセージ

プラクティススクールを実施いただきまして誠にありがとうございました。
2023年から本格運用を開始した新研究所「共創の舞台」において、対面形式で実施できたことは大変うれしく思っております。今回は弊社の抱える困りごとについて、難しいテーマもありましたが積極的に取り組んでいただき、有意義な成果が得られたことに満足しております。また、学生の皆様には社内関係者との交流会など、よい経験になったのではないかと思います。
参加していただいた学生の皆様とTAC-MI関係者の皆様にあらためて御礼申し上げます。
今後の皆様のご活躍とTAC-MIの発展を祈念しております。

参加学生のコメント

Aparna Chitra Sudheer 
博士後期課程1年(参加当時)
物質理工学院 応用化学系 応用化学コース

My practice school at Resonac marked my first-ever experience in a Japanese company. This opportunity gave me valuable insights into the inner workings of a professional organization. The employees at Resonac were incredibly kind and took the time to guide us through various aspects of their work.
I learned extensively about using Jupiter Notebook, data compilation, and, predominantly, computational techniques. Their hands-on approach to teaching allowed us to explore and understand how to tackle errors efficiently. These newfound skills are not only enriching but also highly practical. My time at Resonac was an excellent learning journey, and I am genuinely grateful for the experience.

プラクティススクール第二(JFEスチール株式会社)

9月4日~10月13日の6週間、JFEスチール株式会社にて、成田直生、小池剛大、山崎翔太、丸井莉花、橋本陽太、波多野雄大、大髙勝太郎、森田悠斗、山下浩輝の9名の学生が参加し、3つのグループに分かれてそれぞれの課題に取り組みました。どの課題も、現場が抱える大変やりがいのある題材でした。学生たちは6週間千葉に滞在し、研究所内の会議室を提供いただき、常に担当の方からの手厚い指導を受けながら数理モデルや最先端の機械学習手法も駆使しながら課題解決に取り組みました。工場見学では、学生たちが担当している現場を見させていただき、課題解決の重要さや意義を、身をもって感じることができました。学生たちはJFEスチール株式会社に提供いただいた宿舎に長期滞在をし、仲良く3食を共にし、強い友情が形成されていました。プラクティスクール終了後の学生たちは、成長の自覚と自信を身に付け、活き活きとしていました。楽しみながらも、集中して作業のできる、このような素晴らしい環境を提供していただいたJFEスチール株式会社の皆様には感謝申し上げます。

10月12日、JFEスチール株式会社 スチール研究所講堂にて、対面およびオンラインのハイブリッド開催により、本学とJFEスチール株式会社によるプラクティススクール最終報告会を開催しました。最終報告会には、参加学生、本学教員および企業関係者ら30名が対面で参加しました。報告会では、3つの学生グループがそれぞれの成果を報告し、参加者から活発な質疑が行われました。学生たちの発表後、東京工業大学 物質理工学院の関口学院長及びJFEスチール株式会社 スチール研究所の長谷副所長より講評のお言葉をいただきました。

プラクティススクールに取り組む学生たち
プラクティススクール最終報告会の様子
プラクティススクール最終報告会での発表
 山口猛央教育院長より課題に取り組んだ学生たちを表彰
プラクティススクール最終成果報告会(JFEスチール株式会社 スチール研究所講堂)

JFEスチール株式会社からのメッセージ

この度はプラクティススクールを実施いただきまして誠にありがとうございました。
今回、鉄鋼製造プロセスに関わるテーマに取り組んでいただきましたが、最終報告会では非常に有益な提案をいただきました。本成果は学生の皆様が日ごろ学ばれている高度なDX技術の活用と課題に対する粘り強い取り組み、さらに教職員の先生方の適切なご指導の賜物と感謝しております。
改めまして今回のプラクティススクールの実現にご尽力いただきました教職員の皆様にお礼申し上げます。
今後、プラクティススクールを体験された学生の皆様が各分野のリーダーとして活躍されることを祈念しております。

参加学生のコメント

大髙 勝太郎 
博士後期課程1年
理学院  化学系 化学コース

 

「鉄鋼業」における「情報技術」という未知の分野で課題に取り組むことは、非常に興味深い内容であった反面、解決策を6週間で導けるか不安でした。そのような中で、企業の方々との議論、先生方による情報技術のご支援、そして共に目標を目指したチームメンバー同士の協力のおかげで、最終的には目標の達成まで漕ぎ着けることが出来ました。
今回の経験は、専門以外の分野にも視点を広げるきっかけとなり、また様々な分野の同期との貴重な交流の機会にもなりました。この経験を軸に、自身の研究および人格の発展へ繋げたいと考えています。

2023年度プラクティススクールを終えて

物質・情報卓越教育院長
山口 猛央

2023年度の東工大物質・情報プラクティススクールは株式会社レゾナック共創の舞台とJFEスチール株式会社スチール研究所の2カ所で実施させていただきました。新型コロナウィルスの影響下でも、プラクティススクールは対面を中心に実施してきました。今回も対面で実施でき、多くの成果を得たと同時に、学生も成長し、また、学生同士の連携も進みました。スクールを実施してくださった、株式会社レゾナック様、JFEスチール株式会社様に心より感謝申し上げます。
どちらのスクールでも、大学では経験できない実践的なテーマが課題となり、参加学生はチームで課題解決に挑戦し、解決するだけでなく優れた新しい提案をしました。情報工学的な技術により大量のデータを処理し全体を見渡す俯瞰力、結果から現象を理解し、その中から本質を捉える独創力、新しい提案をする勇気など多くの力を磨くことができました。一緒にスクールを進めてくださった企業の皆様、参加くださった卓越教育院の先生のお陰です。ありがとうございます。
実社会の複雑で重要な課題に対して、異なる専門の博士学生が集まり、短期間にチームで解決するので、学生は見違えるほど成長します。各研究室では、学生が戻ってきて大きく成長したことに驚いているのではないでしょうか。
本プラクティススクールは学生からの評価も極めて高く、企業の皆様のおかげで、産学連携した高いレベルの博士教育が進んでいます。また、私を含め教員も、普段知ることのない生産現場や企業研究に接することができ、大変勉強になります。
これからも産学連携した新しい博士教育を実践する、物質・情報卓越教育院を皆様と一緒に作り上げていきたいと思います。今後とも、どうぞ、よろしくお願いいたします。

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連絡先 東京工業大学 物質・情報卓越教育院事務局
tac-mi[at]jim.titech.ac.jp