活動報告

2020年度物質・情報プラクティススクール実施報告

 プラクティススクールは博士後期課程1年の科目です。物質・情報卓越プラクティススクール第一では、企業訪問に先だって、マテリアルズシミュレーションとマテリアルズインフォマティクスの復習と実習を行いました。2020年度の 物質・情報卓越 プラクティススクール第二は、旭化成株式会社とTDK株式会社の2社で実施いたしました。

 両社から出された課題はいずれも製品などに関連するアウトプットが明確な課題であり、日頃の博士課程での研究とは異なるものでしたが、学生たちは、6週間という限られた期間の中でインフォマティクスやシミュレーションのテクニックを有効に用いることで、目覚ましい成果を出しました。学生たちは、各社の担当研究者とTAC-MI教員を交えたディスカッションを適宜行いながら改善を繰り返し、果敢に課題解決に挑戦していました。異なるバックグラウンドを持つ学生たちが協力し合って、課題解決に取り組む姿は素晴らしく、彼らの能力の高さを改めて認識させられる機会にもなりました。 コロナ禍という特殊な状況下、細やかなご配慮をいただきながら絶好の教育の機会を与えていただいた旭化成株式会社とTDK株式会社に深く感謝申し上げます。

物質・情報卓越プラクティススクール第二(旭化成株式会社)

 9月1日~10月12日の6週間、小松 遊矢、齊藤 彰吾、井上 恵希、渡部 拓馬、佐々木 遼馬、大久保 辰哉、岸野 真之の7名の学生が参加しました。2分野4テーマの課題について、各テーマ1から2名の学生のチームに分かれて取り組みました。旭化成株式会社では昨年度に引き続いてのプラクティススクールでしたが、今年度はリモートワークも活用して行われました。学生たちは普段学んでいる分野と異なる分野をリモートで学ぶことに苦戦しつつも、企業の担当の方やチームメンバーと協力して課題に取り組んでいる姿が印象的でした。実際に製品を作っておられる方との積極的な議論や厳しいコメントを通して企業での開発を体験している例や、プログラムを普段書かない実験系の学生たちが協力して高度なプログラムを書いている例もあり、学生の成長も見られました。これらの成果は、10月12日、神奈川県厚木市の厚木アクストメインタワーを会場としオンラインを組み合わせて、本学と旭化成株式会社によるプラクティススクール最終報告会で報告されました。参加学生7名の報告に対し、本学教員および企業関係者ら50名を超える参加者から活発な質疑が行われました。

プラクティススクールに取り組む学生
プラクティススクールに取り組む学生
プラクティススクール最終報告会の様子
水本哲弥理事・副学長(教育担当)の講評(リモート)
プラクティススクール最終報告会(旭化成株式会社 厚木アクストメインタワー)

旭化成株式会社からのメッセージ

 昨年に引き続き、今年度もプラクティススクールを実施いただき感謝致します。
 昨今のコロナ禍の状況から、出社と在宅勤務の併用など、教職員および学生の皆様には様々な制約の中でプラクティススクールを実施いただきました。しかしながら、このような制限下でも我々の期待以上の成果や知見を得ることができました。これも学生の皆様の真摯な姿勢と、教職員の皆様の多大なサポートの賜物であると考えており、改めて貴学の実力に感嘆させられた次第です。
 今後のTAC-MIの発展と皆様のご活躍を心より祈念いたします。

参加学生からのコメント

物質理工学院
応用化学系 エネルギーコース
博士後期課程1年
大久保 辰哉 

 情報技術を用いて企業の課題解決に取り組むことは、他ではできない貴重な経験であると改めて感じました。初めは短期間で難しい課題にどう対処すればよいかと試行錯誤しましたが、物質科学や情報科学に精通する先生方や企業の方々のご支援のもと、同期の仲間と協力し、何とか当初の計画を達成することができました。このような経験はプラクティススクールならではと考えています。今後はプラクティススクールで得られた知識や経験と、自身のこれまでの研究とのアナロジーをもとに、今後の人生へとフィードバックしていきたいと思っています。

物質・情報卓越プラクティススクール第二(TDK株式会社)

 10月19日~11月27日の6週間、北 玲男、小林 柊司、渡邊 佑紀、Gekko Patria Budiutama、Chen Yugen、Hao Yingquan、廣畑 智紀、李 智の8名の学生が参加し、無機班と有機班の2つのグループに分かれてそれぞれの課題に取り組みました。マテリアルシミュレーションと機械学習を用いた高機能材料探索のためのプラットフォーム作成に取り組みました。全学生がプログラムを自分自身の手で書き、試行錯誤を繰り返しながら課題を進めてくれました。最初は教わるばかりだった学生も、プラクティススクールも後半に入ると、学生から色々と意見も出てくるようになり、学生が短期間で急成長する様を見ることができました。学生は、プラクティススクール最終日まで、夢中になって、そして大きな責任感を持って、TDK株式会社の社員の皆様に少しでも貢献しようと全力で課題に取り組んでくれました。また、最後まで学生に付き合い、そのような環境を作っていただいた社員の皆様には大変感謝申し上げます。得られた成果は、11月27日、千葉県市川市のTDK株式会社 テクニカルセンターを会場とし、社内オンラインを加えて、本学とTDK株式会社によるプラクティススクール最終報告会を開催しました。参加学生8名の報告に対し、本学教員および企業関係者ら50名を超える参加者から活発な質疑が行われ、大盛況のうちに幕を閉じました。

プラクティススクール最終成果報告会での学生による発表
プラクティススクール最終成果報告会での学生による発表
プログラム責任者 須佐匡裕物質理工学院長の講評
山口猛央教育院長より課題に取り組んだ学生たちを表彰
プラクティススクール最終成果報告会(TDK株式会社テクニカルセンター)

TDK株式会社からのメッセージ

 この度はプラクティススクールを実施して頂きありがとうございました。材料開発の2テーマにチャレンジして頂きましたが、物質×情報の知識を活かし、今後の研究開発に役立つ提案や成果を残して下さいました。今年は新型コロナウイルスの影響で満足な実施環境のご提供が出来ませんでしたが、参加学生の高い知識や熱意と教職員の的確なご指導により、6週間の短期間で目に見える結果を出して頂いたことに感謝を申し上げます。
 学生の皆さんが、プラクティススクールでの経験を活かし、世界をリードする様な研究開発リーダーに成長して活躍される様になるのが楽しみです。TAC-MIの更なる発展と優れた人財輩出に期待しております。

参加学生からのコメント

物質理工学院
応用化学系 応用化学コース
博士後期課程2年(9月入学)
HAO YINGQUAN

 

 今回のプラクティススクールでは、「企業が直面している課題に対し、情報技術を用いて解決案を見つけ出す」貴重な体験をさせていただきました。自身も所属している研究室で機械学習の研究を取り込んでいますが、企業の中での開発は研究室と異なって、特徴量が揃っているデータが少なく、その上で汎用性が高い機械学習モデルを構築するのは課題になりました。最終的には、TDK株式会社の皆様と物質・情報卓越教育院の先生方のおかげで、我々は数理モデルを機械学習中に取り込むことで目標を達成しました。また、分野の異なる学生さん達と、完全に新しい課題を短時間内に解決する企業スタイルの研究を経験したことは、自身の人生の大きな糧になっていると思います。

2020年度プラクティススクールを終えて

教育院長からのコメント

物質・情報卓越教育院長
山口 猛央

 新型コロナの影響で困難な状況ですが、無事に旭化成株式会社様およびTDK株式会社様でのプラクティススクールを実施でき、また成果を得ることが出来、企業の関係者様、先生方、学生の方々、皆さんにお礼を申し上げます。今回は、準備やスクールの一部がオンラインになりましたが、多くの時間は企業内で実施する事が出来、大学では触れることが出来ない課題において、シミュレーションやインフォマティクスを活用して多くの課題解決や解決法の提案が出来ました。また、両企業様より、高い評価を頂きました。ありがとうございました。
 学生の方々は、このスクールを通して、多くの情報から本質を見いだす力、その分野での常識を気にせず、新しい提案をする勇気を身につけたと思います。この状況下での成功は教育院にとって大きな前進であり、物質・情報さらにプロセス分野における研究開発の進め方を大きく変える方法論を積み上げました。企業様でも、研究や現場でのプロセス開発において、計算や情報技術を生かす機会となれば幸いです。今後とも、プラクティススクールへのご協力をお願い申し上げます。

最新の記事へ
一覧ページへ
過去の記事へ

連絡先 東京工業大学 物質・情報卓越教育院事務局
tac-mi[at]jim.titech.ac.jp