活動報告

2021年度物質・情報プラクティススクール実施報告

プラクティススクールは博士後期課程1年の科目です。物質・情報卓越プラクティススクール第一では、企業訪問に先だって、マテリアルズシミュレーションとマテリアルズインフォマティクスの復習と実習を行いました。2021年度の物質・情報卓越プラクティススクール第二は、旭化成株式会社と産業技術総合研究所 東北センターの2カ所で実施いたしました。

旭化成株式会社から出された課題は産業に密接に関わるアウトプットが明確な課題である一方で、産業技術総合研究所から出された課題はマテリアルズシミュレーションやマテリアルズインフォマティクスを駆使した、より研究的要素のある課題でした。いずれも骨のある課題でしたが、学生たちは、6週間という限られた期間の中でインフォマティクスやシミュレーションのテクニックを有効に用いることで、目覚ましい成果を出しました。学生たちは、各担当研究者と物質・情報卓越教育院(TAC-MI)の教員を交えたディスカッションを適宜行いながら改善を繰り返し、果敢に課題解決に挑戦していました。異なるバックグラウンドを持つ学生たちが協力し合って、課題解決に取り組む姿は素晴らしく、今回もTAC-MIの学生たちの能力の高さを認識させられる機会になりました。コロナ禍という特殊な状況が続く中、細やかなご配慮をいただきながら絶好の教育の機会を与えていただいた旭化成株式会社と産業技術総合研究所に深く感謝申し上げます。

物質・情報卓越プラクティススクール第二(旭化成株式会社)

8月16日~9月24日の6週間、旭化成株式会社にて、CHEN XIAO、CHUNG YING、村松 央教、尾宮 哲也、淺野 翔、伊藤 耕太郎、CHON SEOUNGMIN、LIAO QIANCHENG、渡邉 真也、陳 正豪、横地 浩義、木村 大輔の12名の学生が参加し、3分野6テーマの課題について、3つのグループに分かれてそれぞれの課題に取り組みました。旭化成株式会社では一昨年、昨年度に引き続いてのプラクティススクールでしたが、今年度は田町ステーションタワーN棟に新たに開設されたデジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」が拠点になりました。DX推進の加速を目的とした非常に快適な環境だったのですが、残念なことにコロナ第5波の影響を受けてリモートワークも活用せざるを得ませんでした。旭化成株式会社には学生たちが普段触れることのない、企業として重要な課題を用意していただきました。リモートワークの難しさはありましたが、企業の担当の方の手厚い指導を受けながらチームメンバーとも協力して数理モデルや最先端の機械学習手法などを応用して課題解決に取り組みました。コロナ禍で制限があるなかで、このような素晴らしい環境を提供していただいた旭化成株式会社の皆様には感謝申し上げます。

これらの成果は、9月24日、田町ステーションタワーN棟会議室を会場としオンラインを組み合わせて、本学と旭化成株式会社によるプラクティススクール最終報告会で報告されました。参加学生12名の報告に対し、本学教員および企業関係者ら50名を超える参加者から活発な質疑が行われました。

プラクティススクールに取り組む学生たち
プラクティススクールに取り組む学生たち
プラクティススクール最終報告会での発表
プラクティススクール最終報告会での発表
プラクティススクール最終報告会(旭化成株式会社 田町ステーションタワー)

旭化成株式会社からのメッセージ

今年度も弊社にてプラクティススクールを実施いただき、誠にありがとうございました。
一昨年から続くコロナ禍の影響により、出社日数制限など、昨年以上に厳しい制約下での実施となりましたが、リモートを上手く活用し、これまで以上の素晴らしい成果を創出いただきました。今回のテーマは比較的挑戦的なものが多かったですが、最新の技術も取り入れ大きな前進に繋げて頂いたことに社員一同感服しております。
これもひとえに、真剣にテーマと向き合っていただいた学生の皆様、および手厚くサポートいただいた教職員の皆様のおかげで、改めて感謝申し上げます。
最後に、今後のTAC-MIの益々の発展と皆様のご活躍を心より祈念いたします。

参加学生のコメント

Chon Seoungmin 
博士後期課程2年
物質理工学院 応用化学系 応用化学コース

In the summer of 2021, I accomplished the 6-weeks long practice school program at Asahi Kasei. At the beginning, I was not sure if I could finish the project on time because of a lack of knowledge and skills in the field. However, the project was based on state-of-the-art technology, thus the entry barrier was not very high. My partner and I first understood the concept in detail and planned how the overall flow of the project moved ahead. Therefore, we progressed the project gradually and we could discuss progress with professors and staffs. As a result, I believe I left satisfactory results at Asahi Kasei. The practice school was a great opportunity to confirm my potential ability.

物質・情報卓越プラクティススクール第二(産業技術総合研究所)

10月11日~11月19日の6週間、産業技術総合研究所 東北センター(宮城県仙台市)にて、福永 悠、SONG SUBIN、中西 優馬、大友 泰輝、石濱 圭佑、本間 千柊、酒向 正己の7名の学生が参加し、3つのグループに分かれてそれぞれの課題に取り組みました。学生たちは6週間仙台に滞在し、マテリアルズシミュレーションや機械学習を用い、高機能材料の探索やプロセスの最適化に取り組みました。全学生がプログラムを自分で書いたりシミュレーションを自分で行ったりし、試行錯誤を繰り返しながら課題を進めてくれました。

進めていくうちに新たな課題が見つかり、学生たちは産業技術総合研究所 材料・化学領域 化学プロセス研究部門の研究者たちと協力して臨機応変に対応していました。プラクティススクールも後半に入ると、学生が自分でコードを改良して利用するようになる、主体的に大規模なシミュレーションを行えるようになるなど、学生が短期間で急成長する様を見ることができました。最後まで学生に付き合い、このような環境を作っていただいた産業技術総合研究所の皆様には大変感謝申し上げます。 得られた成果の発表の場として、11月19日、産業技術総合研究所 東北センターにて、対面およびオンラインのハイブリッド開催により、本学と産業技術総合研究所によるプラクティススクール最終報告会を開催しました。3グループ(学生7名)からの報告に対し、本学教員および関係者ら約40名が参加し、参加者から活発な質疑が行われ、大きな成果があったことを確認し、終了しました。

プラクティススクールに取り組む学生たち
プラクティススクールに取り組む学生たち
プラクティススクール最終報告会での発表・質疑応答
山口猛央教育院長より課題に取り組んだ学生たちを表彰
プラクティススクール最終成果報告会(産業技術総合研究所 東北センター)

産業技術総合研究所からのメッセージ

この度はプラクティススクールを実施して頂きありがとうございました。学生の皆様には、産総研が取り組んでいる社会課題の1つであるCCU(CO2回収・有効利用)に寄与する材料探索やプロセスの最適化を実施して頂きました。6週間という短期間でしたが、学生の皆様の熱意と先生方のご指導の甲斐あって、成果報告会では課題解決に向けた新たな提案を行って頂きました。また、産総研から参加した若手研究員の研究が今後大いに進展していく可能性がでてきましたことに、改めて感謝申し上げます。
本来ですと期間中に仙台の街も楽しんで頂ければ良かったのですが、生憎コロナ禍のため叶いませんでした。今回参加された学生の皆様におかれましては、将来様々な分野でご活躍されることを祈念しますと共に、共同研究等で再び産総研東北センターにお越し頂ければ幸いに存じます。

参加学生のコメント

大友 泰輝 
博士後期課程1年
工学院 機械系 機械コース

バックグラウンドの異なる学生や企業の研究者と協力し、情報技術を駆使して「チーム」で課題解決に取り組むことは、プラクティススクールならではの体験でした。私は機械学習の経験が浅く、情報技術に精通する特任の先生方のご支援やチームメンバーの協力のもと、最適化問題に関する理解や予測モデルの構築などを試行錯誤しながら進め、何とか計画通りに研究を進めることができました。6週間という短い期間でしたが、研究室から遠く離れた宮城に長期滞在し、博士後期課程の同期や外部の研究者とのネットワークを築けたことは、私にとって大きな財産になりました。

2021年度プラクティススクールを終えて

教育院長からのコメント

物質・情報卓越教育院長
山口 猛央

2021年度も、8月16日〜9月24日に旭化成株式会社で、10月11日〜11月19日に産業技術総合研究所東北センターで、それぞれ物質・情報プラクティススクールを実施できました。新型コロナの影響がある中、実施してくださった関係者の皆様に、心よりお礼申し上げます。理学院、工学院、情報理工学院、物質理工学院など、異なる分野の学生がチームとなり、専任の先生と一緒に課題解決に取り組み、6週間の短い期間で素晴らしい成果を出しました。成果に関しては、それぞれの機関から高い評価を頂いていると思います。また学生は専門外であるからこそ、過去の研究のバイアスがかからない状況で、多くの情報を客観的に解析し、意見や議論を取捨選択するうちに、専門家が驚くような新しい発見や提案をしていました。多くの情報から本質を見抜く力、新しいアイデアを提案する勇気を身につけたと確信しました。是非、身につけた力を、これからの皆さんの研究に活かしてください。

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連絡先 東京工業大学 物質・情報卓越教育院事務局
tac-mi[at]jim.titech.ac.jp