活動報告

2022年度物質・情報プラクティススクール実施報告

プラクティススクールは博士後期課程1年の科目です。物質・情報卓越プラクティススクール第一では、企業訪問に先だって、マテリアルズシミュレーションとマテリアルズインフォマティクスの復習と実習を行いました。2022年度の物質・情報卓越プラクティススクール第二は、旭化成株式会社(田町ステーションタワー内オフィス)と花王株式会社和歌山工場の2カ所で実施いたしました。両社のご厚意により本年も各社拠点内で対面実施することができ、学生はオフィスでの過ごし方や通勤・昼食など、企業で働く生活スタイルについても体験することができました。

旭化成株式会社と花王株式会社和歌山研究所から出された課題は、いずれも産業に密接に関わる、期待されるアウトプットが明確な課題でした。いずれも骨のある課題でしたが、学生たちは、6週間という限られた期間の中でマテリアルズインフォマティクスやマテリアルズシミュレーションのテクニックを駆使して目覚ましい成果を出しました。学生たちは、各社の担当研究者と物質・情報卓越教育院(TAC-MI)の教員を交えたディスカッションを密接に行いながら改善を繰り返し、果敢に課題解決に挑戦していました。異なるバックグラウンドを持つ学生たちが協力し合って、課題解決に取り組む姿は素晴らしく、今回もTAC-MIの学生たちの能力の高さを認識させられる機会になりました。未だにコロナ禍という特殊な状況が続く中、細やかなご配慮をいただきながら絶好の教育の機会を与えていただいた旭化成株式会社と花王株式会社に深く感謝申し上げます。

プラクティススクール第二(旭化成株式会社)

8月18日~9月29日の6週間、旭化成株式会社にて、AUGIE ATQA、GAO CHENGUANG、梶山健一、貝沼凌、木村茂、片岡大志、山本拓実、田口裕太、前田翔一、髙橋希、飯塚忠寿、西村開の12名の学生が参加し、5テーマの課題について、グループに分かれてそれぞれの課題に取り組みました。旭化成株式会社では4年連続のプラクティススクールになりました。2021年初めから田町ステーションタワーN棟に開設されたデジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」が今年も実施拠点になりました。DX推進の加速を目的とした非常に快適な環境だったのですが、残念なことに今年もコロナ禍の影響を受けてリモートワークも併用せざるを得ませんでした。旭化成株式会社には、学生たちが普段触れることのない企業として重要な課題を用意していただきました。リモートワークの難しさはありましたが、企業の担当の方の手厚い指導を受けながらチームメンバーとも協力して数理モデルやマテリアルズシミュレーション、そして最先端の機械学習手法などを駆使して課題解決に取り組みました。コロナ禍で制限があるなかで、このような素晴らしい環境を提供していただいた旭化成株式会社の皆様には感謝申し上げます。

これらの成果は、9月29日、田町ステーションタワーS棟会議室を会場とし、対面とオンラインのハイブリッド開催にて、本学と旭化成株式会社によるプラクティススクール最終報告会で報告されました。参加学生12名の報告に対し、本学教員および企業関係者ら50名を超える参加者から活発な質疑が行われました。報告会は、物質・情報卓越教育院 山口猛央教育院長および旭化成株式会社 久世和資専務執行役員の開会のご挨拶で始まり、続いて5つの学生グループがそれぞれの成果を報告しました。学生たちの発表後、井村順一理事・副学長(教育担当)、物質理工学院 関口秀俊学院長及び旭化成株式会社デジタル共創本部インフォマティクス推進センター 河野禎市郎センター長より講評のお言葉をいただきました。

プラクティススクールに取り組む学生たち
プラクティススクール最終報告会での発表
プラクティススクール最終報告会(旭化成株式会社 田町ステーションタワー)

旭化成株式会社からのメッセージ

今年度も弊社にてプラクティススクールを実施いただき、誠にありがとうございました。依然としてコロナ禍が続く中、出社日数制限をはじめとした様々な制約もございましたが、リモートと対面の機会を効果的に使い分けて実施いただきました。年々テーマの難易度が増しているにも関わらず我々の期待を超えた成果や知見に繋げていただき深く感銘を受けました。複雑な課題に対して果敢にチャレンジしていただいた学生の皆様と、終始細やかなサポートをいただきました教職員の皆様に、改めて感謝申し上げます。 今後のTAC-MIの益々の発展と皆様のご活躍を心より祈念いたします。

参加学生のコメント

前田 翔一 
博士後期課程1年
物質理工学院 材料系 ライフエンジニアリングコース

私はPythonや機械学習の経験がほとんど無く、このプラクティススクール第二で課題解決に取り組むことができるかとても不安でした。そのような状況の中で、卓越教育院の先生方や企業の方々に基礎から丁寧に教えていただき、またチームメンバーと協力することで、最終的に目的とする深層学習を用いた分類モデルを構築することができました。 
普段は大学で基礎研究を行っている私にとってこの6週間は、実社会における課題発見から解決までのプロセスを学ぶことができるとても貴重な時間となりました。今後の社会におけるMIの重要性やそれに精通した人材の必要性をより強く感じたことで、より一層情報科学の修得に励みたいと思うようになりました。

プラクティススクール第二(花王株式会社)

10月11日~11月18日の6週間、花王株式会社 和歌山工場にて、李邱穆、桜井勇太、WEI FENG、林正丹、鴨川径、大見拓也、LIU QIUMIN、杉浦開、細川直輝、安納爽響の10名の学生が参加し、3つのグループに分かれてそれぞれの課題に取り組みました。各課題は解決が望まれる最先端の骨のある題材でした。学生たちは6週間和歌山に滞在し、研究所内に場所を提供していただき、常に担当の方の手厚い指導を受けながらチームメンバーとも協力して数理モデルやマテリアルズシミュレーションを駆使するとともに、さらに最先端の機械学習手法も駆使して試行錯誤を繰り返しながら課題解決に取り組みました。また、各課題に関係する研究所内の見学もさせていただくことで課題の意義などの理解が深まりました。遠隔地での長期滞在だったっため、学生たちの健康管理にも配慮していただきました。学生たちは休日の和歌山を楽しんだようです。コロナ禍で制限があるなかで、和歌山工場内にこのような素晴らしい環境を提供していただいた花王株式会社の皆様には感謝申し上げます。

11月17日、花王株式会社 和歌山研究所大会議室にて、対面およびオンラインのハイブリッド開催により、本学と花王株式会社によるプラクティススクール最終報告会を開催しました。参加学生10名の報告に対し、本学教員および企業関係者ら約50名が参加しました。報告会では、3つの学生グループがそれぞれの成果を報告し、参加者から活発な質疑が行われました。学生たちの発表後、東京工業大学 益一哉学長、物質理工学院 関口秀俊学院長及び花王株式会社 マテリアルサイエンス研究所 青木克敏所長より講評のお言葉をいただきました。

プラクティススクールに取り組む学生たち
花王エコラボミュージアム(和歌山工場)見学
プラクティススクール最終報告会での発表
山口猛央教育院長より課題に取り組んだ学生たちを表彰
プラクティススクール最終成果報告会(花王株式会社 和歌山事業場)

花王株式会社からのメッセージ

この度はプラクティススクールを実施して頂きありがとうございました。
取り組んで頂きましたテーマは、データ数が少なく、実施にあたって不安に思っておりましたが、今後に繋がる提案を数多く頂きました。これは、学生の皆様の熱意と高い専門性、及び先生方の丁寧なご指導のお蔭様でございます。
また、今回対面で実施できるよう、ご配慮、ご対応頂きました教職員の皆様に重ねて御礼申し上げます。弊社社員も皆様の熱意や能力の高さに触れ、新たな気持ちで研究に向き合うことが出来ました。
プラクティススクールを経験された学生の皆様が世界をリードする研究者となられること、そしてTAC-MIの益々のご発展を心より祈念しております。

参加学生のコメント

鴨川 径 
博士後期課程1年
理学院 化学系 エネルギーコース

プラクティススクールでは、機械学習や量子化学計算を駆使して企業課題の解決に努めました。大学での研究との違いに最初は戸惑いましたが、豊富なドメイン知識を有する“物質”の学生とデータ分析に秀でた”情報”の学生が協力することで、6週間という短期間で成果を残すことができました。このような専門分野の異なる同期や企業の研究者との共同作業を通して、他では得られない経験をすることができました。この経験を今後の研究生活に活かしていこうと思います。

2022年度プラクティススクールを終えて

物質・情報卓越教育院長
山口 猛央

2022年度の東工大物質・情報プラクティススクールは旭化成株式会社田町タワーステーションと花王株式会社和歌山工場の2カ所で実施させていただきました。新型コロナウィルスの影響で活動が制限される中でも、主に対面でプラクティススクールが実施できました。実施してくださった、旭化成株式会社様、花王株式会社様に心より感謝申し上げます。
どちらのスクールでも、大学では経験できない実践的なテーマが課題となり、参加学生はチームで課題解決に挑戦し、解決するだけでなく新しい提案をすることに成功していました。情報工学的な技術により大量のデータを処理し全体を見渡す俯瞰力、シミュレーションも併用しその中から本質を捉える独創力、新しい提案をする勇気など多くの力を磨くことができました。一緒に課題解決を進めてくださった企業の皆様、参加くださった卓越教育院の先生のお陰です。
実世界の複雑で重要な課題に対して、異なる専門の博士学生が集まり、短期間にチームで解決するので、学生は見違えるほど成長していきます。各研究室では、学生が戻ってきて大きく成長したことに驚いているのではないでしょうか。
本プラクティススクールは学生からの評価も極めて高く、企業の皆様のおかげで、産学連携した高いレベルの博士教育が進んでいると実感します。また、私を含め教員も、普段知ることのない生産現場や企業研究に接することができ、大変勉強になります。
これからも産学連携した新しい博士教育を実践する、物質・情報卓越教育院を皆様と一緒に作り上げていきたいと思います。今後とも、どうぞ、よろしくお願いいたします。

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連絡先 東京工業大学 物質・情報卓越教育院事務局
tac-mi[at]jim.titech.ac.jp