2025年度プラクティススクール実施報告
プラクティススクールは博士後期課程1年の科目です。本年度のプラクティススクール参加学生は合計22人でした。物質・情報卓越プラクティススクール第一では、企業訪問に先だって、実践的なデータサイエンスを行うために機械学習の復習やデータの前処理の実習を行いました。2025年度の物質・情報卓越プラクティススクール第二は、太陽誘電株式会社(SOLairoLab・神奈川県川崎市)と曙ブレーキ工業株式会社(Ai-Village・埼玉県羽生市)の2カ所で実施いたしました。学生は各企業における研究開発を体験することはもとより、オフィスでの過ごし方や通勤・昼食など、企業で働く生活スタイルについても体験することができました。多くの社員さんとの交流の機会も設けていただき、博士を取って企業で働くというキャリアプランについても理解を深められたように思います。
太陽誘電株式会社と曙ブレーキ株式会社から出された課題は、実際の産業を改善する課題から将来の新規事業において重要な役割を果たす課題まで様々ありました。学生たちは、6週間という限られた期間の中で、課題の背景にある物理モデルを構築し、マテリアルズインフォマティクスやマテリアルズシミュレーションのテクニックを駆使して素晴らしい成果を出しました。特に、各社の担当研究者と物質・情報卓越コースの専任教員を交えたディスカッションを毎日のように行いながら改善を繰り返す姿が印象的でした。また、普段の専門と異なる分野の課題に割り振られた学生が専門分野の知識を活かして新しいアプローチを提案するなど、積極的に課題に取り組んでいました。事前の準備や期間中のイベントの企画を含め、細やかなご配慮をいただきながら絶好の教育の機会を与えていただいた太陽誘電株式会社と曙ブレーキ株式会社に深く感謝申し上げます。
プラクティススクール第二(太陽誘電株式会社)
2025年5月26日~7月4日の6週間、太陽誘電株式会社にて、本間 寛治、毛利 恵聖久、阿部 穂高、田能 佑紀、小林 達也、渡邉 篤人、政野 紫苑、山本 悠可、石田 晃一、宮崎 大地、杉山 茉莉絵の11名の学生が参加し、5テーマの課題について、グループに分かれてそれぞれの課題に取り組みました。
企業として重要で、製品開発に直結する高度な課題をご準備いただき、学生たちは大学の研究では得難い社会実装を意識した研究に取り組むことができました。特に、普段は実験を中心に研究を進めている学生たちも、企業の方々からの手厚いご指導のもと、試行錯誤を重ねながら、6週間という限られた期間で最先端のシミュレーション手法を駆使できるまでに大きく成長していました。
また、群馬にある太陽誘電株式会社 R&Dセンターを見学させていただき、実際の製造工程や高精度な計測・分析装置を拝見することで、研究がどのように製品開発へとつながっていくのかを具体的かつ実感をもって理解することができました。さらに、社員の方々との座談会も設けていただき、大学と企業における研究の違い、さらにはキャリア形成に関する学生の悩みに対して貴重な助言をいただきました。
これらの成果は、7月4日、太陽誘電株式会社 新川崎センター「SOLairoLab」を会場とし、対面とオンラインのハイブリッド開催にて、本学と太陽誘電株式会社によるプラクティススクール最終報告会で報告されました。最終報告会には、参加学生、本学教員および企業関係者ら約40名程度が参加し、活発な質疑応答が行われました。報告会は、太陽誘電株式会社開発研究所長の平國執行役員および物質・情報卓越コースの山口コース主任の開会のご挨拶で始まり、続いて5つの学生グループがそれぞれの成果を報告しました。学生たちの発表後、物質・情報卓越コースの斎藤特命教授および太陽誘電株式会社 人事・総務担当の山﨑執行役員、および開発研究所 副所長 小西執行役員より講評のお言葉をいただきました。





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太陽誘電株式会社からのメッセージ
昨年度に引き続き、本年度も弊社にてプラクティススクールを実施いただき、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。学生の皆様には、弊社の共創拠点である新川崎センター「SOLairoLab(そらいろラボ)」において、電子デバイス企業として弊社が抱える課題の解決に取り組んでいただきました。各課題はいずれも挑戦的で価値あるものでしたが、研究方針の立案から解決策の検討まで、粘り強く取り組んでいただきました。また、教職員の先生方にも熱心にご指導いただき、改めて感謝申し上げます。 今後も東京科学大学 物質・情報卓越コースが、優れたリーダーを輩出する仕組みとしてさらに発展していくことを心より祈念しております。
参加学生のコメント

博士後期課程1年
物質理工学院
材料系 材料コース
TAC-MIで学んだ計算材料科学の技術を駆使しながら企業のリアルな開発課題に取り組むことで、問題設定から系のモデル化・実装に至るまで、一連の実践力が格段に鍛えられたと感じています。また、6週間という短い期間でまとまった成果を出す必要があり、企業ならではのスピード感を体感できたことも印象深かったです。短期間ながら、自分とは異なるバックグラウンドを持つTAC-MIの学生たちや先生方・企業の担当者様と実に多種多様な議論や交流ができ、自身の視野が大きく広がりました。このような貴重な機会をいただいた実施企業の皆様に心から感謝申し上げます。
プラクティススクール第二(曙ブレーキ工業株式会社)
8月25日~10月3日の6週間、曙ブレーキ工業株式会社にて、田代 真優、髙橋 ゆりあ、濵口怜、小川 竹次郎、PUPROMPAN PURIN、室之園 相生、Kashlakov Alexander、野中 慧悟、横山 寛義、吉江 遼大、鈴木 敬将の11名の学生が参加し、4つのグループに分かれてそれぞれの課題に取り組みました。
いただいた課題は企業の実際のデータを活用する非常に実践的な課題でした。学生たちは 6 週間泊まりで滞在し、担当の方と様々な議論を行いながら課題解決に取り組みました。実際の車両に搭載されているブレーキを分解してみるなど、学生たちは課題解決が実際の製品開発にどのように活かされるかを実感しながら進めることができました。また、社員の方との会話を通して、博士を取って企業で働くというキャリアプランや、企業における研究開発の性質について理解を深め、自身のキャリアについて見つめ直すよい機会でもありました。学生は、大学ではなかなか得られない成長の機会に大いに満足していました。
10月3日、グローバル研修センターAi-Villageにて、対面およびオンラインのハイブリッド開催により、本学と曙ブレーキ工業株式会社によるプラクティススクール最終報告会を開催しました。最終報告会には、参加学生、本学教員および企業関係者ら約30名 が参加しました。報告会では、4つの学生グループがそれぞれの成果を報告し、参加者から活発な質疑が行われました。学生たちの発表後、東京科学大学の理学院化学系・後藤教授及び曙ブレーキ工業株式会社開発部門CAE解析部の野口部長より講評のお言葉をいただきました。





曙ブレーキ工業株式会社からのメッセージ
この度は、弊社にてプラクティススクールを実施いただき、誠にありがとうございました。学生の皆様には、私たちの主力製品である自動車用ブレーキの摩擦材に関する課題を基に、4つの研究テーマに取り組んでいただきました。物質や情報に特化した学びを活かし、様々な手法で迅速に課題解決に挑まれ、期待を上回る成果の提案を頂き、大変感銘を受けました。限られた活動期間ながら、学生同士の協力に加え、教職員の皆様や弊社スタッフとの間においても率直に意見を交わし合い、一体となって取り組む姿勢が非常に印象的でした。 意欲的に取り組まれた学生の皆様、熱心にご指導いただいた教職員の皆様に心より感謝申し上げます。今後もTAC-MIの皆様が社会の様々な分野でご活躍され、さらに大きく貢献されることを心よりお祈り申し上げます。
参加学生のコメント

博士後期課程1年
情報理工学院
情報工学系
物質・情報卓越コース
機械学習の予測モデルを構築し、実験の企業が抱える応用的な課題に取り組みました。単純な機械学習モデルだけでなく、背景にある物理を考慮した様々なモデルを比較する必要がありました。プラクティススクールでは異なる分野から参加した学生で協働して課題に取り組むため、普段の研究では考えに及ばないアイデアが飛び交いました。今回の課題はどの参加学生にとっても異分野でしたが、どの学生からも自分にはない視点に基づくアプローチがあり、結果に関わらず刺激になりました。学び溢れる機会を設けてくださった企業の皆様に心より感謝申し上げます。


