活動報告

物質・情報卓越教育院 第2回 最先端研究セミナー 開催

物質・情報卓越教育院では、2021年7月21日(水)に、オンラインにて「東工大 物質・情報卓越教育院 第2回最先端研究セミナー」を開催しました。

最先端研究セミナーは、第一線の研究者の方をお招きして、情報科学と物質科学の最先端の話題を基本から分かりやすく解説していただくシリーズ企画です。昨年に続き、第2回目となる本セミナーでは、鈴木 賢治教授(東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所)と関嶋 政和准教授(東京工業大学 情報理工学院)にご講演いただきました。 本セミナーは、情報科学と物質科学の最先端を広く一般の方に知っていただくため、一般公開セミナーとして開催されました。セミナー当日は、企業関係者や学内の学生・教職員、学外の研究者など約250名の方にご参加いただき、盛況のうちに終了しました。

<第1部>「メディカルAIイメージングとAI支援画像診断」

鈴木 賢治 先生(東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授)
鈴木 賢治 先生 のご講演

第1部では、「メディカルAIイメージングとAI支援画像診断」と題し、鈴木先生が20年以上研究を続けられているMTANNと呼ばれる最初期のディープラーニング(深層学習)による医用画像処理とAI支援画像診断の研究開発と実用化についてご紹介いただきました。
セミナーでは、胸部レントゲン画像の骨と軟組織を分離するための画像処理技術、 仮想高線量CT画像の生成による放射線被曝の低減、医用画像中の病変のディープラーニングセグメンテーション手法などついて分かりやすく解説いただきました。これらの研究の一部は、すでに米国FDAの承認を経て実用化されています。
MTANNは、少ない学習データでも高い予測精度を達成できるディープラーニングの手法です。医療分野では、大量の症例を収集することは極めて困難であり、これが医療AIの最大のボトルネックとなっていました。MTANNは、本ボトルネックを解決し、様々な疾患に対する医療AIの構築に道を開きました。
一方、AIの実用化においては、ブラックボックス問題が残されており、説明可能なAI(XAI)の開発が強く望まれています。XAIによれば、AIの失敗の原因を知ることができ、研究者がAIをコントロールすることができるようになります。
AIイメージングやAI画像解析技術は、汎用性の高い基盤技術であり、非破壊検査や物質科学においても活用が大いに期待されます。

参加者の声

  • 単に先端的というだけでなく、医療の質の向上に寄与していることに感銘を受けました。
  • スモールデータで高い予測能が得られるMTANN、セマンティック セグメンテーション(画像内の全画素にラベルやカテゴリを関連付けるディープラーニングの手法)等、大変興味深い内容でした。
  • 医療分野のAIは興味があり、最先端の分析技術の動向が拝聴できて有意義でした。
  • 他分野への応用も可能に思える技術で興味深かったです。

<第2部>「機械学習とシミュレーションによる新型コロナウイルス感染症治療薬の探索」

関嶋 政和 先生(東京工業大学 情報理工学院 准教授)
関嶋 政和 先生のご講演

第2部では、機械学習とシミュレーションによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の探索など創薬研究についてご紹介いただきました。
本セミナーでは、新型コロナウイルスの3CLプロテアーゼ(メインプロテアーゼ)を標的に、薬が持っていることが望ましいと考えられる立体的な性質であるファーマコフォアの研究を始め、シミュレーションや機械学習を用いたヒット化合物探索手法について詳しく解説していただきました。
セミナー冒頭では、先日公開されたばかりのタンパク質の構造予測を実行するAIプログラム「AlphaFold2」についても触れ、「これまで構造が複雑で予測が難しかったタンパク質構造も解くことができる革新的なプログラムである」と紹介しました。
新薬の開発においては、「薬市場は売り上げに対して投資額が大きい。1つの薬を開発するのに費用が数千億円かかる。現在も世界で7000以上の薬が開発中である。薬が承認されるまでも10年以上時間がかかる。開発費用を削減し、開発期間を縮めるためには、AIを活用した技術を用いることが大きなカギとなる。」と言います。
今後、バイオインフォマティクスを活用した創薬研究のより、より早く有効な治療薬が開発されることが期待されます。

参加者の声

  • AlphaFold2の興奮が伝わってきました。蛋白質の立体構造や相互作用のシミュレーションが、創薬の研究の推進力になっていることを理解できました。先端研究の議論がTwitter上で行われていることには、少々驚きました。
  • 変異株などについてもお話しされていて、興味深かったです。
  • 現在進行形の研究の進展の様子を垣間見ることができました。非常に興味深く拝聴できました。

本セミナーにご参加いただいた皆様へ

この度は、多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
本セミナーはシリーズ企画であり、年に1~2回の頻度で開催いたします。物質と情報の最先端の情報を、第一線でご活躍する著名な先生方にご講演いただきます。今後も、皆様にとって有益でかつ、最新の話題を提供して参りますので、次回以降もぜひ最先端研究セミナーにご参加ください。

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連絡先 東京工業大学 物質・情報卓越教育院事務局
tac-mi[at]jim.titech.ac.jp