物質・情報卓越教育院 第1回 最先端研究セミナー 開催
物質・情報卓越教育院では、2020年8月27日（木）に、オンラインにて「東工大 物質・情報卓越教育院 第1回最先端研究セミナー」を開催しました。
最先端研究セミナーは、第一線の研究者の方をお招きして、情報科学と物質科学の最先端の話題を基本から分かりやすく解説していただくシリーズ企画です。
第1回目となる本セミナーでは、高安美佐子教授（東京工業大学 科学技術創成研究院）と森川淳子教授（東京工業大学 物質理工学院）にご講演いただきました。 本セミナーは、情報科学と物質科学の最先端を広く一般の方に知っていただくため、一般公開セミナーとして開催されました。セミナー当日は、企業関係者や学内の学生・教職員、学外の研究者など約300名の方にご参加いただき、盛況のうちに終了しました。
＜第1部＞「ビッグデータで見る社会現象」
講師 高安 美佐子 先生（東京工業大学 科学技術創成研究 教授）
第１部では、「ビッグデータで見る社会現象」と題し、ビッグデータ解析を通じて、自然現象と同じように社会の現象について科学的に解析した研究事例についてご紹介いただきました。
セミナーの中では、今の21世紀において、インターネットや情報機器等の発明によりデータが精密に取られるようになり（”データの観測手段”が確立したことにより）、社会現象が新しく科学の土台に上がってきたことをご説明いただきました。詳細なビッグデータを解析することにより数理モデルを構築し、予測や制御につなげていくといった、科学の手法を社会や経済の現象に対してもそのまま適用できることを、金融市場、企業の取引ネットワーク、ブログなどのSNSなど、様々な分野における具体的な事例を通して、分かりやすくご紹介いただきました。
世の中の様々な社会現象が想像以上にモデリングされ、理論化されていることや、物理や化学などの法則と類似性があることについて、物質科学を研究する学生や研究者からも驚きの声が多く寄せられました。
ビッグデータ解析を使いこなすことで、社会が直面している様々な問題を解決出来ることを知ることができ、大変魅力的なセミナーでした。
参加者の声
- 想像以上に社会の色々なものがモデリングされ、理論化されていることに驚きました。（大学院生）
- 様々な社会現象が物理法則と高い類似性があり、その関係性が社会現象の予測にも使えることは、今後の世界にきわめて大きなインパクトを与えることは間違いない。（教員）
- 身近な具体例を挙げて紹介いただき、大変分かりやすく興味深かったです。（会社員）
＜第2部＞「機械学習による高熱伝導高分子の設計と測定法開発による熱物性検証」
講師 森川 淳子 先生（東京工業大学 物質理工学院 教授）
第2部では、情報統合型物質・材料開発イニシアティブで、統計数理研究所（ISM）や物質・材料研究機構(NIMS)と共同で取り組んだ研究についてご紹介いただきました。
本セミナーでは、所望の特性を持つ化学構造を設計する機械学習アルゴリズムiQSPRと転移学習という解析技術を組み合わせた最新の機械学習の手法を用いることで、新しい高分子を開発する手法について詳しく解説していただきました。
この研究では、新規に分子設計された高熱伝導高分子について、可視化超高速熱分析やミクロ温度波法の測定法を開発することにより、従来、高温では熱分解が生じるため観測不能とされてきた高温のガラス転移温度、融点を測定することに成功しました。
「マテリアルズインフォマティクスは、材料科学と工学における突破口の鍵になる。アルゴリズムと開発手法の研究はまだこれから。新しい材料の開発は、既存のものでは不可能であるため、新しい機器と測定法の開発が必要となる。」とご説明いただきました。
今後、マテリアルズインフォマティクスの手法を用いることで、従来の常識を覆すような新しい高分子材料が発掘されることが期待され、参加者にとって非常に有益なセミナーでした。
参加者の声
- マテリアルズインフォマティクスにおけるデータの少なさを転移学習で補うという方法に大変感銘を受けました。（会社員）
- 私自身もこのような機械学習を身につけないと、将来研究員という立場を失う危機感を感じました。（研究員）
- 熱伝導率予測のマテリアルズインフォマティクス、大変興味深い内容でした。データのオープン化も素晴らしい試みだと思います。（会社員）
本セミナーにご参加いただいた皆様へ
この度は、定員を超える多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
本セミナーはシリーズ企画であり、来年度以降も定期的に開催いたします。物質と情報の最先端の情報を、第一線でご活躍する著名な先生方にご講演いただきます。今後も、皆様にとって有益でかつ、最新の話題を提供して参りますので、次回以降もぜひ最先端研究セミナーにご参加ください。
