第7回TAC-MI最先端研究セミナー開催報告
物質・情報卓越コースでは、2026年8月3日(月)にオンラインにて「第7回TAC-MI最先端研究セミナー」を開催しました。
本セミナーは、第一線の研究者の方をお招きして、情報科学と物質科学の最先端の話題を基本から分かりやすく解説していただくシリーズ企画です。
第7回となる今回は、本学工学院 荒井 慧悟准教授と本学総合研究院 フロンティア材料研究所 笹川 崇男准教授をお招きして、ご講演いただきました。
本セミナーは、情報科学と物質科学の最先端を広く一般の方に知っていただくため、一般公開セミナーとして開催されました。当日は、企業関係者や学内の学生・教職員、学外の研究者など多くの方にご参加いただき、盛況のうちに終了しました。
<第1部>「環境に埋め込まれた情報を読む―量子センシングが拓く新しい物質・情報科学―」
荒井 慧悟(東京科学大学 工学院 准教授)

第1部では、「環境に埋め込まれた情報を読む―量子センシングが拓く新しい物質・情報科学―」と題し、東京科学大学工学院の荒井慧悟准教授より、量子センシング技術の基礎から最新の研究動向、社会実装に向けた展望についてご講演いただきました。
量子センシングは、量子状態が外部環境に敏感であるという性質を利用して、磁場や温度、圧力などの微小な変化を高精度に計測する技術であり、量子コンピュータとは異なる量子技術の重要な応用分野として期待されています。講演では、ダイヤモンド中のNVセンターを用いた量子センサーを中心に、局所的な物理情報を可視化する手法についてご紹介いただきました。特に、高圧下における超伝導体の局所磁気応答のイメージングや、従来法では捉えにくい材料内部の微細な変化を観測する研究事例が示され、量子センシングによって材料やデバイスの機能発現メカニズムをより深く理解できる可能性が紹介されました。さらに、量子センシングを単なる高感度計測技術としてではなく、「環境に埋め込まれた情報を読み出す技術」と位置付け、材料科学と情報科学を融合した新しい物質情報科学への展開や、国際共同研究・産業応用を見据えた研究についてもご説明いただきました。
量子技術が基礎研究のみならず、次世代の材料開発や産業応用にも大きく貢献することが期待される講演となりました。
参加者の声
- 量子センシングの概要を学ぶことができて良かった。
- 自分の研究内容と合致するので、理解が深まった。
- 量子センシングに関して、基礎知識、研究テーマ、ビジネス展開などポイントをわかりやすくお話しいただけた。
<第2部>「量子物質科学:トポロジカルから2.5次元まで」
笹川 崇男(東京科学大学 総合研究院 フロンティア材料研究所 准教授)

第2部では、「量子物質科学:トポロジカルから2.5次元まで」と題し、東京科学大学総合研究院フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授より、トポロジカル物質研究の歩みと、量子コンピューティングとの関連についてご講演いただきました。
講演では、単結晶育成技術を基盤とした多様な機能性材料の研究を紹介するとともに、電子構造計算を活用した新奇物質探索の取り組みについてご説明いただきました。続いて、トポロジカル絶縁体やトポロジカル超伝導体の基礎概念と、その発見によって物性物理学が大きく発展した経緯についてご紹介いただきました。マヨラナ準粒子などの特異な量子状態が、将来的な誤り耐性量子コンピュータの実現につながる可能性についても分かりやすく解説され、基礎科学と量子情報技術との密接な関係が示されました。また、現在主流となっている超伝導量子ビット方式や量子ゲート方式の量子コンピュータについても紹介され、IBMによるクラウド経由で利用可能な量子コンピュータなど、量子計算技術の発展状況や今後の展望についてもご説明いただきました。
基礎物性研究から量子情報技術へと発展する研究の流れを俯瞰できる講演となり、量子技術の今後の可能性について理解を深める貴重な機会となりました。
参加者の声
- トポロジカル物性という物性物理において非常にホットなトピックを講演会レベルの内容で聴講できる、大変貴重な機会だった。
- 久しぶりに量子力学の世界、それに2000年以降の新規トピックス、量子計算機についての概要を知ることができた。
- トポロジカル超伝導体と、マヨナラ準粒子の役割を知ることができて良かった。材料工学における知見が広がった。
本セミナーにご参加いただいた皆様へ
この度は、多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
本セミナーはシリーズ企画であり、年に1~2回の頻度で開催いたします。物質と情報の最先端の話題について、第一線でご活躍されている著名な先生方にご講演いただきます。今後も、皆様にとって有益かつ最新の話題を提供して参りますので、次回以降もぜひ本セミナーにご参加ください。


